2004年 12月、豪州最大の伐採企業ガンズ社は、タスマニアの原生林・老生林保護の活動を行ったことに対して、20を数える人々と組織(17名と3団体)を相手 取って裁判に訴え、環境運動に対する事実上の宣戦布告を行ったのです。この大訴訟の標的として、2名の議員(オーストラリア「緑の党」設立者の上院議員ボ ブ・ブラウン氏、タスマニア州会議員ペグ・パット女史)、豪州の主要な環境団体の一つであるウィルダネス・ソサエティ(Wilderness Society)、医師による環境グループとともに、歯医者、映像製作者、おばあちゃん、医者、2名の学生を含む一連の普通の人々をも含んでいました。→ 2010年1月29日、最後に残った1団体3名への提訴が2010年2月2日の裁判直前に、取り下げられ、和解金が支払われて、5年にわたる裁判は、ようやく終焉した。

ガンズ20

ガンズ社に訴えられた環境活動家達は、「ガンズ・トゥエンティ」との異名をとっており、それら全員のリストとプロフィールは、次のサイトで見ることができます。: www.GUNNS20.org/defendants.html

この訴訟は、タスマニアの環境活動家たちのコミュニティに大きなショックを与えまし た。訴状に名前の挙った人々は、不安とストレスを抱えました。法廷で争うには多額の資金が必要ですし、多くの労力を費やすことになります。それに伴う不安 も大きいものがあります。ところが、この訴訟によって、森林保護運動は決意をあらたにし、団結することに成功しました。この訴訟に対して反対運動が組織さ れ始めたちょうどそのころ、ガンズ社は新しくパルプ工場を建設する計画を発表したのです。パルプ工場ができれば、タスマニアの森林は一層の破壊の憂き目に 遭うことになります。訴訟以降も、パルプ工場の建設反対と森林破壊の反対運動は引き続き力を増しています。一方で、訴えられることを恐れ、沈黙させられた 市民の方々もおられます。

申し立て

訴訟では、ガンズ社は、被告側である「森林保護運動」は同社に総額600万豪ドル(5億円)以上の被害をもたらしたとして、以下の申し立てをしています

  1. ルーカストンの森、ハンプシャーおよびトライアバナのチップ工場、およびスティックス渓谷で行われた「抵抗運動」が同社の伐採活動を妨害した。
  2. バーニー・木材チップ工場、および、ガンズ社が「バンスキア環境賞」から除外された件に関して、被告は「企業への中傷」をした。
  3. ベルギーと日本において、ガンズ社の海外顧客に対して働きかけるキャンペーンを実施した。
  4. 株主、投資家、銀行を含む対企業キャンペーンを実施した。

同社は、また以下のようにも主張しています。「ガンズ社に反対する大規模なキャンペー ン(陰謀)」があり、被告側のとった行動はすべてリンクしており、被告側は「ウィルダネス・ソサエティ」の「指示に基づき、同組織のために行動した」。こ の主張は特に気がかりなものです。というのは、ANU(オーストラリア国立大学)講師のティム・ボニーハーディ氏が指摘するように、「効果的な政治行動と いうのは、個人と複数の組織間のコーディネーションを要するものだ。タスマニアの森林保護のような大規模な全国的キャンペーンには、ガンズ社が令状であげ ているような首謀者はいないにしても、少なくとも何回かのミーティングや、電話やプラニングが当然、つきものだ」からです。仮に、こうしたミーティング が、「大規模な陰謀」の一部としてみなされるのだとしたら、もし誰かが、一度だけでも保護運動のミーティングに参加したとしたら、その人のその後の全ての 言動が「もとの大陰謀」に結びつけて考えられることになってしまいます。

裁判の記録

2005 年半ば、ガンズ社の申し立ては法廷において問題に直面しました。同社の訴えを無効にしようとする公聴会の開催直前、同社は新たに360ページの陳述書を提 出しましたが、これは同社が自分達の主張に不備があることを暗に隠そうとしたのです。しかし、ビクトリア州最高裁では同社の訴えを新旧双方ともに、裁判の ルールに沿っておらず、「恥ずべきこと」として退けました。最高裁は新たな訴えを提出し直すように要請しました。同年8月に同社はこの訴訟の第三版を申し 立てました。追加としてさらに50万豪ドル(約4250万円)の損害賠償を被告側に求めたのです

ティム・ ボニーハーディ氏は、この訴訟の意義について、以下のように語っています。「この訴訟は、危機にさらされている生態系の攻防戦です。それゆえ、意義深いも のです。広大な原生林・老生林の森。これを巡るガンズ社と被告側の抗争です。2004年の連邦選挙前の両者の抗争の中心にあったのが、この森ですが、今年 になってハワード政権が森林パッケージを打ち出した後でも、概ね、この状況は変わっていません。ガンズ社が損害賠償として求めている額は680万豪ドル (約5億8000万円)(そのうち、ウィルダネス・ソサエティとそのスタッフには350万豪ドル(約3億円)以上)。この額が大きいことも、この訴訟をさ らに重要なものとしています。ガンズ社は申し立ての中で、法律に関する新奇の問いを多く投げかけていますが、これらもまた、この訴訟を重要なものとしてい ます…。ガン社の企業行動は、この国における政治活動の新しい境界を生み出すことにもなるという意味でテスト・ケースとなるものです」。

■英国議会での抗議決議の提案

Early Day 動議

(訳注:通常、審議される見込みのない議員動議の告示。問題への関心を高め、他の議員にEDMへの署名を呼びかける方法として用いられる)

「ガンズ20訴訟」(2005年7月14日)動議

ノーマン ベーカー氏 
110名の議員による署名

 本議会は、豪・木材チップ会社のガンズ社による、オーストラリア国内でタスマニアの原生林伐採に対して反対運動を行っていた20の環境団体やキャンペーナー、政治家などを提訴するという行動を糾弾し、その提訴という行動は基本的な市民的自由や言論の自由への攻撃であると信じており、また、攻撃的で、いかがわしい法的手続きによって、正当な市民の抵抗を抑制しようというどのような企業の行動についても糾弾するもので、タスマニアの象徴的森林では世界最長の広葉樹を有し、多くの希少種にとっての住処であることを認識しており、2004年のオーストラリアの連邦議会選挙の間には連合政府と野党労働党の双方ともに、伐採企業から脅威にさらされているタスマニアの原生林について保護を行っていくことを公約したことに留意し、さらに世論調査ではオーストラリアの一般市民の80%がタスマニア原生林の全てについて完全な保護を行うことを求めていることが示されたことに留意し、ガンズ社に対してはその提訴を取り下げることを強く求め、さらには日本企業の王子製紙株式会社、日本製紙株式会社、大王製紙株式会社、中越パルプ工業株式会社、住友商事株式会社、伊藤忠株式会社、三井物産株式会社、富士ゼロックス、キャノン、リコーに対して、タスマニア原生林を供給源とする木材チップや紙製品の購入を停止することを強く求め、タスマニア原生林からの木材チップの購入停止を行った三菱製紙株式会社については祝辞を述べたいと思います。

(現在、大王製紙は、植林木のみを購入することとしており、天然林の購入を停止。また、製紙会社がガンズ社と直接取引きとなったため住友商事、伊藤忠、三井物産が商社として関っていないと考えられる。)